2018年8月14日(火)
松竹 2017年
タイトルが楽しいと思ったら、横尾忠則でした。
このシリーズ、家族というより、年寄りはつらいよっていう感じですね。
それが今の家族を象徴しているのかもしれませんが。
そういう意味では、橋爪功が本当にうまくて、「いるいる、こういうじいさん」というのが見事です。
郊外(横浜?)の一軒家、車はマークⅡ、悠々たる隠居生活ではありますが、厄介者扱い。
まあ、自分の偏屈から引き寄せてはいますが。
それでも、近所の料理屋の女将かよ(風吹ジュン)にはメロメロで、毎朝のラジオ体操には息子のコロンをつけていく。
時節柄、高齢者の運転事故がらみで、どうやって運転をやめさせようかというのが家族の悩み。
奥さんはカルチャー教室の友人たちとオーロラを観に行くツアーに出る。
その間に大騒動。
周造の高校時代の友人、サッカー部のGK丸田吟平(小林稔侍)にバッタリ会って、近しい同級生たちで同窓会。
流れで料理屋かよで痛飲して、自宅へ泊まらせる。
折しも翌日の土曜日は、周造の免許を取り上げる説得をするための家族会議で全員が集まる。
そこで、二階に寝ていた丸田が・・・。
そこここに現代風のつくりが見えます。
たとえば、メールのやりとりが画面に表示されるとか、
憲子(蒼井優)の母は保険の外交員で、アパートで寝たきりの祖母の面倒をみているとか。
父とは別居状態、父は一人暮らしという設定。
そのおばあちゃんが、急に「なつがくーればおもいだすー」と歌いだすくだり。リアルですね。
工事現場で働いていた丸田を探し出し、高校時代の思い出を語り合う。
テニス部の高野節子、おせっちゃんにあこがれたという話が、彼女と結婚したという丸田。
事業が失敗して、娘とも会っていないという丸田。
そこで向井が応援団で「フレーフレーマ、ル、タ」とやる。ドタバタ。
銀杏が好きだという丸田に、たくさん出してやれ、という周造。
このへんまではいい感じなのですが。
この後は、ネタバレなので観てない人は読まないでください。
翌朝、丸田が冷たくなっている、ということで大騒ぎになり、
けっきょく集まった中でも、看護師の憲子が一番たよりになる存在で、立ち回る。
そこから、救急隊、警察と騒ぎが広がり、皆のお昼にとったうな重の出前が腰を抜かし・・・。
葬儀も身寄りのない中、この家族全員(おばあさん以外)が火葬場で見送る。
向井と周造が、ぎりぎりに車で駆けつけて、銀杏を棺桶にたっぷりいれてやる。
破裂する音、びっくりして出てくる職員(笑福亭鶴瓶)、焼き場の中の銀杏が鼻に入る図で、笑いのうちに終わっていく。
しかし、しかし。
なんだかスッキリしないのですね。
まず小さいところから。
73歳という年代の人たちで、サッカー部って珍しくないですか?かなりレアな感じがするし、新しい感じがして雰囲気に合わないのでは?
少なくとも私はそう感じました。
銀杏が好きで、それでどっさり食べて飲むという設定ですが、銀杏ってそんなにたくさん食べれますか?
それも70過ぎの老人が。これも疑問。
後半、テーマは、警察役の劇団ひとりが言う「無縁社会、下流老人」というところに行ってしまいます。
最初の、老人の無鉄砲な元気ぶり、というところから急展開になります、が。
たとえば、憲子の両親もその予備軍として語られますが、ちょっと切り口が軽すぎるような。
誰かから聞いた話を聞かされているような、そんな印象になっていなかったでしょうか。
面白かったところを探すと、旅行先から電話をしてきたおばあさんが「オーロラが見れて、もう死んでもいい」というので、
大騒ぎの中で、周造が「死んでしまえ」というのを、電話口の泰蔵(林家正蔵)がうまく返事をする場面。
ここは落語のような間合いで笑いました。
あと、周造と息子の幸之助(西村雅彦)のいがみ合いも、笑えます。
ただ、それらを吹き飛ばすのが、丸田の死、です。
ほとんど赤の他人なのに、おばあちゃんのベッドで死んでしまうという、ちょっと気持ち悪いですよね。
描き方もちょっとリアルで、ここまで必要だったのかなぁ。
ドタバタとして笑えないし。
憲子の両親の状況をもっと掘り下げたりしたほうが良かったのではないでしょうか。
そういえば、当然なのかもしれませんが、憲子は紀子なんですね。
なんとなく後味の悪い作品、という印象です。役者さんたちはみな達者です。残念。
口で説明するのではなく、憲子の涙でみせるのではなく、家族のふるまいで見せてほしかったです。
監督山田洋次
プロデューサー深澤宏 、 三好英明
原作山田洋次
脚本山田洋次 、 平松恵美子
撮影近森眞史
音楽久石譲
美術倉田智子 、 小林久之
編集石井巌
録音岸田和美
照明渡邊孝一
●出演者
平田周造橋爪功
平田富子吉行和子
平田幸之助西村雅彦
平田史枝夏川結衣
金井成子中嶋朋子
金井泰蔵林家正蔵
平田庄太妻夫木聡
平田憲子蒼井優
女将・かよ風吹ジュン
丸田吟平小林稔侍
新米巡査・中村藤山扇治郎
オクダサトシ
向井有薗芳記
広岡由里子
近藤公園
北山雅康
鰻屋徳永ゆうき
平田謙一中村鷹之資
平田信介丸山歩夢
刑事劇団ひとり
火葬場職員笑福亭鶴瓶
※データはmovie walkerです。