2017年5月14日(日)
東京テアトル 2016年
2016年というのはアニメ映画の当たり年で、「シン・ゴジラ」に驚いていたら、「君の名は。」が大ヒットをして、
そこへ「聲の形」、そうこうしているうちに「この世界の片隅に」となったのです。
なので、怪獣ものとアニメにうつつを抜かしている、という人目を気にして、
すぐには見れなかったこの映画、やっとキネマ旬報シアターで見ました。
若い女性の目で見た昭和の戦争前から戦後にかけての生活。
それも東京や大阪ではなく、呉という地方都市での物語。
テーマは、きっと戦争ではなく、自分の多感な時代を思い出してみているという事でしょうか。
だから、私には冒頭のノリを売りにきて、人さらいの駕籠に入れられるところとか、
それがのちに結婚するきっかけになっているとか、
もっと細かいところをいうと、荷物を背中に背負う時に、壁に寄りかかって風呂敷の前を結ぶところとか、そんな事を丁寧に描くことがテーマだったように思います。
また、その人さらいをどうやって逃れたか、あるいは座敷童がスイカを食べるというエピソード。
それらが、ただの白日夢ではなく、なんとなくそのあとの展開にみなつながっているという多層性が、
実際のこの世界をきちんと描いている気がしてなりません。
箸を持つ場所でどこに嫁ぐかを占うとか、森永ミルクキャラメルの味とか
、汽車がトンネルに入ると窓をしめないと煙が全部入ってくるとか、
嫁に行くときに傘を持って来たかえ、と訊かれるとか(このエピソードはいまだによく意味がわかっていない)、
もっと後の方で、砂糖のツボにアリがたかって、ツボを水ガメに浮かそうとして・・・ということとか。
とにかくそんな生活の積み重ねが、ある日原爆や空襲という実際のものとして日常に入ってくる瞬間。
そこの大きさというのがあるけれど、それも乗り越えて、もっとリアルなのは、
終戦の時の、すずの「一人残らず死ぬまでたたかんじゃなかったんか」とさけぶところ。
ここはとても胸を打ちます。
こういう世界は、実写では描けないでしょう。
いや、こういう描き方をなぞることはできないでしょう。
ただ、フォレスト・ガンプやビッグ・フィッシュを思い出しました。
そのような、無垢な思い、現実と空想の境界をこえること、そして戦争という中でもこの世の美しさを見るということ。
この映画、日本以外では理解しにくいと思いますが、日本アニメの傑作と思います。
監督片渕須直
脚本片渕須直
原作こうの史代
企画丸山正雄
プロデューサー真木太郎
キャラクター・デザイン松原秀典
作画監督松原秀典
撮影監督熊澤祐哉
美術監督林孝輔
音楽コトリンゴ
録音調整小原吉男
音響効果柴崎憲治
編集木村佳史子
監督補浦谷千恵
色彩設計坂本いづみ
画面構成浦谷千恵
動画検査大島明子
●出演者
北條すず(旧姓:浦野)能年玲奈
黒村径子尾身美詞
北條周作細谷佳正
黒村晴美稲葉菜月
北條円太郎牛山茂
北條サン新谷真弓
水原哲小野大輔
白木リン岩井七世
浦野すみ潘めぐみ
浦野十郎小山剛志
浦野キセノ津田真澄
森田イト京田尚子
小林の伯父佐々木望
小林の伯母塩田朋子
知多さん瀬田ひろ美
刈谷さんたちばなことね
堂本さん世弥きくよ
渋谷天外
※データはmovie walkerです。