2015年10月4日(日)
The Human Bullet 1968年 ATG
明治100年記念作品と出る。
そうだ、1968年(昭和43年)は明治100年なのだった。
日本の戦争映画といえば、ある時期から、なんだか「愛」だけがテーマになってたことがあります。
甘ったるいテーマ曲が流れて、泣きを誘うという寸法ですが、このころは全く違いますね。
終戦の年、沖縄も占領されて、何度か出てくる「まるでおへそを見られちまったようで」というばあさんの言葉が、この映画の全体をよく表しているように思います。
庶民感覚での終戦直前の気持ちというのでしょうか。
その他にも、小沢正一の軍曹とのやりとりとか、笠智衆と北林谷栄の夫婦がやってる古本屋の場面とか、雷門ケン坊の小学生とか、ちょっととぼけた感じの人物たちがとてもいい感じです。
主人公の「あいつ」(寺田農)は、工兵隊の幹部候補生で大学生の真面目一本やり。
だから裸で訓練しろということになったり、憲兵に女郎屋の道を聞いたりするのです。
最初が肝心というアドバイスで、お化けか、観音様か。
お化けばっかりで辟易をしたところに、偶然みつけた観音様が、セーラー服の少女(大谷直子)。
雨の中の、彼女との一夜も素晴らしい描写です。ねずみとうさぎです。
砂丘で出会う人たち、まかないのおばさん。小学生とその兄、教師。
漁師の若者たちの訓練と看護婦のなぜか現代的な3人。夜の海辺と大空襲。
イナバの白兎とワニたち。
対戦車爆弾はもう不要となって、その代わり人間魚雷としての任務に。
そのことを教えてくれる高橋悦史も、酒をあおりながらまたいい味です。
終戦も知らずにずっとドラム缶で漂流する男。
知らないうちに東京湾に流れ着いて、汚わい船に拾われる・・・。
ラストが、現代(昭和43年のレジャーに湧く海岸)になる。
撮影がとても的確でしかも様々なテクニックが使われていて、改めて驚きました。
コミカルな中にも、哀しみがにじみ出ていて、いろんな人が生活を感じさせます。
とにかく、主人公はじめよくみな走るんですね。
裸で走ったり、砂丘を走ったり、大勢で走ったり、大谷直子も裸で走ってます。
そういう時代の勢いを感じてしまいました。
監督岡本喜八
脚本岡本喜八
製作馬場和夫
撮影村井博
美術阿久根巖
音楽佐藤勝
録音渡会伸
照明村井博
編集阿良木佳弘
製作担当者堤博康
助監督中西源四郎
記録土屋テル子
スチル阿久根巖
ナレーター仲代達矢
●出演者
あいつ寺田農
少女大谷直子
父天本英世
古本屋の爺さん笠智衆
古本屋の姿さん北林谷栄
前掛のおばさん春川ますみ
オワイ船の船長伊藤雄之助
軍曹小沢昭一
区隊長田中邦衛
憲兵中谷一郎
ひげの下士官高橋悦史
軍曹のオカミサン菅井きん
軍曹のオカミサン富永美沙子
母三橋規子
少年・兄頭師佳孝
少年・弟雷門ケン坊
学校長閣下今福将雄
モンペのオバサン三戸部スエ
中隊長長谷川弘
教師園田裕久
候補生阿知波信介
候補生新谷秀平
看護婦宮本満里子
看護婦津田亜矢子
看護婦武藤洋子
※データはmovie walkerです。