2019年6月8日(土)
THE MONUMENTS MEN 2013年 アメリカ
権力者は常に芸術品を手元に集めようとするんでしょうか。
ヒトラーがこんな風に欧州の芸術品を集めた総統美術館をつくろうとしていたというのは初めて知りました。
(実話が元、と冒頭に出ますし、エンドロールには実際の美術品を取り戻したときの写真が流れます)
1943年ごろから終戦にかけて、欧州の美術品を守らなければならないと訴えるハーバード大学美術館長のフランク・ストークスによって、本人含めたメンバーが集められる。
ちょうど7人の侍みたいな構成ですが、まあ美術関連のオジサンが中心なので、初等兵の訓練から始める。
そしてノルマンディーから上陸した「モニュメンツ・メン」は、前線の部隊からまったく協力を得られないまま、情報をあつめて戦場をいく。
一方パリの美術館では、ナチスのゲーリングが集めた美術品を管理するクレール(ケイト・ブランシェット)。
ゲシュタポの弟が射殺され、大量の美術品が運び出され、失意の中ところへグレンジャー(マット・デイモン)が訪れる。
この2点から物語が進んでいきます。
物語は戦争ものではなく、オーシャンズのようなチーム・プロジェクトものに見えます。
まあ、出演者もそうだし、そういうところを狙ったのでしょうけど。
だから、ちょっと軽い感じが、戸惑いもあります。
メンバーの死とかもあり、前線での撃ち合いなどもあるのですが、なんか深刻な雰囲気ではないですね。
ハラハラドキドキもないわけではないですが、そんなに胸が苦しくなるわけでもない。
すごく現場で苦労する感じでもない、いじめられるわけでもない。
逆に、本国からクリスマスに送られてくる録音された娘たちの歌とか、
建物の外で、脱走してきたドイツ兵と銃を向け合って対峙する場面とか、
堅い表情のクレールがほほえみを浮かべるところとか、スケッチされたいろんな場面が印象的です。
ぐっとくるのは、ストークス(ジョージ・クルーニー)が戦場でいう言葉。
「我々がやっているのは文化や生き方を守るためだ」
「民族の歴史や誇りをなきものにするヒトラーの意図を覆すため」
いいんですね、ここ。
そして、ドイツの将校と二人で話す場面。
「君はユダヤ人じゃないな」「ああ」「私に感謝するんだな」という不遜な態度をとる将校。
そこで「タバコは初めてだ」と言いながら、おもむろにストークスがいう言葉。
毎朝シドの店でコーヒーとベーグルをたのみ、新聞を読む。
NYタイムズに小さな記事を見つける。
戦争犯罪人ヴェグナー大佐が処刑され、無名墓地に埋葬された、と。
その時、このタバコの味とあんたのアホ面を思い出すだろう。
コーヒーを飲み終えて、新聞をユダヤ人のシドに渡し、あんたを忘れる。
かっこいいのですね。
ただ、あんまりよくわからないエピソードもいろいろあって、たとえば狙撃手が子供だったり、地雷を踏んでしまってそれをどう対処するかという場面とか、特になくても良かったような気がします。
もしかしたら、原作にそういう部分があるのかもしれません。
ちょっと残念なところもありますが、美術品に賭ける心意気、という映画として記憶したいですね。
監督ジョージ・クルーニー
製作グラント・ヘスロフ 、 ジョージ・クルーニー
製作総指揮バーバラ・A・ホール
原作ロバート・M・エドゼル
脚本ジョージ・クルーニー 、 グラント・ヘスロフ
撮影フェドン・パパマイケル
音楽アレクサンドル・デプラ
共同製作クリストフ・フィッサー 、 ヘニング・モルフェンター 、 チャーリー・ウォーケン
美術ジム・ビゼル
編集スティーブン・ミリオン
●出演
フランク・ストークスジョージ・クルーニー
ジェームズ・グレンジャーマット・デイモン
リチャード・キャンベルビル・マーレイ
ウォルター・ガーフィールドジョン・グッドマン
ジャン・クロード・クレモントジャン・デュジャルダン
プレストン・サヴィッツ ボブ・バラバン
ドナルド・ジェフリーズ ヒュー・ボネビル
クレール・シモーヌケイト・ブランシェット
サム・エプスタインディミトリー・レオニダス
※データはmovie walkerです。