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ハッド(1962)

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2019年3月30日(土)
Hud 1962年 アメリカ
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何気なく見始めて、すぐにその映像に引きこまれます。
アメリカの田舎町、走るトラック。

そんなところでピンク・キャデラックを探す若者ロン(ブランドン・デ・ワイルド)。
ある家の前に止めてある車、玄関ポーチには脱ぎ捨てたハイヒール。
探していたハッド(ポール・ニューマン)を、伯父の言いつけで連れ戻そうというところ、フレッチャー夫人の主人が帰宅して、あやうく大ゲンカになるところを切り抜ける。

牧場の手伝いをしているハッド、その父ホーマー、そして引き取って育てているロン。
家政婦として住み込みのアルマ(パトリシア・ニール)。

牧場の牛が死んでいて、それが口蹄疫とわかる。
牛をすべて処分することになり、ホーマーは大きな痛手を負う。

ハッドは、亭主持ちの女と遊びまわり、飲み屋で喧嘩しては毎日を過ごしている。
牛の事件で、ホーマーとロンが決定的に決裂。
父は誠実に生きることを信条としており、息子は全く逆。

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しかも、愛していた長男はハッドの飲酒運転が原因の自動車事故で亡くなったということがわかってくる。

愛していた息子を亡くし、残ったもう一人を愛することができない。
このテーマは繰り返し描かれていますね。
古くは「エデンの東」、新しいところでは「普通の人々」、確か姉妹でもそんな映画があったなぁ。

あとは、変わっていく時代、価値観のぶつかり合いというテーマ。
父親のホーンはロンと映画にいきます。
そこでは、デートでイチャイチャする若者を見て、「こんなところで金をはらってあんなことをするのか」と言います。
映画が始まる前、アニメに合わせて「いとしのクレメンタイン」をみんなで歌うという場面があります。
これは典型的な古きよき時代のなごり。

ハッドは、口蹄疫の検査が出る前に、全部牛を売ってしまえと父に迫ります。
しかし、父はそれをまったく理解できないこととして一蹴します。

ハッドは言います。「誠実なんてリンカーンの時代の話だ。金がすべてということはすでにこの国中に伝染してる。」

街にはロデオ大会があり、豚を捕まえる競技もあり、その前座には子供カップルのダンスコンテストがあります。
豚を捕まえる姿に皆大笑いして、ハッドは優勝します。

兄は、草原に寝そべり、草の伸びる音が聞こえる、と言ったんだと話すハッド。
まさに良きアメリカの青春、若者、自然です。
ところが、その帰り道、ハッドの運転で車が橋に激突して、兄は死んでしまう。

兄の交通事故、口蹄疫による牧場の閉鎖、ホーマーの良き時代が急速に終わっていきます。
2頭だけ残ったロングホーンを、ホーマーは自分で処分します。
そしてホーマーも体調を崩していく。
アメリカが変わっていくことの象徴のように。

この映画のもう一つの魅力は、アルマ(パトリシア・ニール)の存在。
いつも苦み走った顔つきで家事をこなす彼女は、「ろくでなしにひっかかる年じゃない」けれど、
離れに住み込んでいて、ハッドを憎くは思っていない。

イメージ 3

ハッドもロンも彼女が好きで、でもストレートには表現できない。
結局彼女はバスに乗って去って行ってしまうのですが。

ホーマーは牛のいなくなった牧場を石油会社に売ることを拒みます。
「石油には乗ることも育てることもできない」

その後の今を見ればわかるとおり、牧場は石油に代わり、国のありようが大きく変わっていくわけですが。

詩情あふれる、いい映画でした。

監督マーティン・リット
製作マーティン・リット 、 アーヴィング・ラヴェッチ
脚本アーヴィング・ラヴェッチ 、 ハリエット・フランク・ジュニア
撮影ジェームズ・ウォン・ホウ
編集フランク・ブラクト
●出演
Hud_Bannonポール・ニューマン
Homer_Bannonメルヴィン・ダグラス
Almaパトリシア・ニール
Lon_Bannonブランドン・デ・ワイルド

※データはmovie walkerです。

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