2016年1月4日(月)
Fires of the Plain 1959年 大映
こういう戦記ものというのは、重苦しく、時間が長く感じるものですが、この映画は違いました。
ありがちな殊更に悲惨さを強調することもなく、淡々と戦場をさまよう主人公を描いています。
自分の隊を病身で役立たずと追い出され、病院からも体の動く者として追い出されます。
林の中にいる「半病人」たちは、米軍の砲撃を逃れ、パロンポンを目指してふらふらと行進していく。
草原に立つ教会の塔にひかれるように村に入った田村は、無人の村で、たまたま戻った村人が隠した塩を見つけ、一人を撃ち殺してその塩を持ち逃げします。
いつしか破れた靴を次々に取り換える様子、泥の中に顔を突っ込んで倒れている男が、言い返す場面など、静かですが戦争の本当の一面を見せてくれます。
林の半病人の一人、タバコの葉を腹に巻いている安田、その安田にこき使われている永松。
こういう人間関係が露骨に出るのが極限の戦場なのでしょう。
沼を超えようとして戦車隊にやられていく日本兵。
降参と行って出て行って撃ち殺される日本兵。
死体だらけの平原や野山を歩き続ける田村。
気がふれてしまって、俺の二の腕を食えという将校。
そして、誰かに見られている感覚を覚えて、平原で永松に再開。
猿の肉を食べて行きのびているという永松は安田と一緒だが、愛想を尽かして水飲み場で安田を撃ち殺す。
そこで彼が見たものは、そして彼が銃を向けた永松は。
村田は野火のある方へ、自分への銃声をききながら向かっていく。
文芸作品としての風格を充分に持った、いい映画でした。
監督市川崑
脚色和田夏十
原作大岡昇平
企画藤井浩明
製作永田雅一
撮影小林節雄
美術柴田篤二
音楽芥川也寸志
録音西井憲一
照明米山勇
●出演者
田村船越英二
兵隊ミッキー・カーチス
兵隊月田昌也
兵隊杉田康
下士官浜口喜博
兵隊滝沢修
無精髯の軍医山茶花究
兵隊稲葉義男
兵隊星ひかる
兵隊佐野浅夫
分隊長伊達信
狂人の将校浜村純
曹長潮万太郎
兵隊飛田喜佐夫
兵隊大川修
兵隊此木透
兵隊竹内哲郎
兵隊早川雄三
兵隊志保京助
衛兵守田学
軍医伊東光一
兵隊夏木章
※データはmovie walkerです。